閉店のごあいさつ

本日、2024年3月30日(土)をもって、コメ書房は営業を終了しました。準備段階、2018年4月のオープンから今日に至るまで、当店に関わっていただいたすべての方にお礼申し上げます。

 


この地域と住民の皆さんには特別な感謝を。

 

お店を始めると決めたとき、まず、町内の方々にお話をしにいきました。心配してくれた方はいらっしゃいましたが、反対なさる方はどなたもいらっしゃいませんでした。農村の納屋で商いを始めるということについて、私たちには確信があっても、地元の方にとっては当時はよく訳のわからない話だったのではないかと思います。地域にとってもリスクがなかったわけではないでしょう。新しい人の流れが生まれることで、よくもわるくも環境が変化してしまうかもしれません。それでも、皆さんが反対されなかったのは、その時点で数年間ここで暮らしていた私たちのことを信頼してくださったからだと思います。町内だけなく、より広域においてもそれは同様でした。この六年間、私たちはずっとこの地域に見守っていただきました。

 

田園風景というのは、つい自然のものであるかのように誤解してしまいがちですが、実際にはそれは、そこに暮らす人たちのたゆまぬ努力によって維持されてきた、人の手がつくりあげた風景です。この地域においても、私たちがここに来るよりもずっとずっと昔からそのような営みが繰り返されてきたのだと思います。コメ書房の窓から見える美しい景色とは、その歴史的な、継続的な営為の結晶であると私たちは感じてきました。この地域に暮らす人たち(その末端には私たちもいました)や地元の農事組合法人によって、現在進行形でこの田園風景が保全されているからこそ、コメ書房は成立し、これまで続けてくることができました。

 

  

 

コメ書房を訪れてくださったお客さんたちに最大限の感謝を。

 

お客さんのなかには、毎週のように通っていただいた方がいました。

ほとんど一週も欠かさずにカレーを食べ続けてくれた方もいました。

私たちに会うために来てくれる方がいました。

何時間も一緒に話し込んだ方がいました。

 

ずっと来てみたかったのだと言ってくれた方がいました。

すごく近所から、すごく遠くから来てくれた方がいました。

一度来店し、それからまたご家族やお友達を連れて来てくれた方がいました。

うちのお店をみて、自分も始めることにしたのだと教えてくれた方がいました。

 

大切な本を譲ってくれた方がいました。

一冊から三千冊まで、たくさんの本を。

本を気に入り買ってくれた方がいました。

一冊から三十冊まで、たくさんの本を。

 

閉店の話を知って謝ってくれた方がいました。

その人のせいであるはずがないのに。

やめないでほしいと何度も説得しに来てくれた方がいました。

行くところがなくなっちゃうな、と呟いてくれた方がいました。

 

来店された数や、お話をした機会の有無にかかわらず、帰り際に「自分にとって大切な場所だった」「すごく好きな店だった」「とても残念だ」と言ってくれた方がいました。口にされなくても、そう思ってくれている方は他にもいらっしゃったかもしれません。

 

コメ書房はお客さんに恵まれたお店だったと思います。

それは終わってしまうからそう思うのではなくて、私たち二人がずっと感じてきたことでした。

 

 

 

この場所でお店を続けられた私たちは幸せ者でした。

六年間、本当にありがとうございました。

コメ書房

富山県南砺市の農村にある納屋を改装したブックカフェです。